焦点:9月CPI1%割れの声、その先は円安が下支えで日銀に追い風

足元で顕著なエネルギー価格の上昇鈍化

9月26日、物価上昇率が足元で低下し、9月CPIは前年比1.0%を割り込むとの予想も出てきた。写真は昨年11月に都内で撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 26日 ロイター] - 物価上昇率が足元で低下し、9月全国消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年比1.0%を割り込むとの予想も出てきた。ただ、進行する円安の影響で中期的には物価を下支えないし押し上げるとの予測も広がっており、2%の物価目標を掲げる日銀には「追い風」だ。今後は賃金動向とともに円安の行方が、金融政策の動向にかなり影響しそうだ。

<足元で顕著なエネルギー価格の上昇鈍化>

全国8月のコアCPIは増税分を除いたベースで前年比1.1%にとどまった。主因はエネルギー価格の上昇幅鈍化。

昨年後半からシリア情勢の悪化などで原油価格が一時、1バレル110ドルを超え、日本に輸入されるエネルギー価格は上昇基調が鮮明だった。

ただ、最近は一転して原油だけでなく、他の国際商品市況も下落基調をたどり、日本に輸入される原材料価格も下落する品目が目立っている。

先行して発表されている9月東京都コアCPIをみると、電気代やガス代などエネルギー価格が8月の前年同月比プラス5.5%から同4.7%に上昇幅が縮小。ガソリン価格も同じように上昇幅が鈍っている。

このため9月コアCPIには、原油価格下落の影響が最も大きく出る見通し。エコノミストの見通しの中には、コアCPIが1%を割り込むとの見通しが目立つ。

日銀は、夏場にはCPIの上昇幅が1.2%より縮小することはないとみていた。だが、原油価格の下落を受けて、上昇幅が1%程度まで縮小するとの春ごろの見立てに戻しつつあるようだ。夏場の天候不順が食料品の値下げ要因になっているとの見方もある。

<円安進行、物価見通し押し上げ>

ここまでは、年内に日銀が追加緩和に踏み切るとみてきた一部のエコノミストの見通しに沿って動いているとも言える。

だが、足元で大幅な円安が進行し、先行きのCPIの動向に大きな影響を及ぼすことが確実視されるようになってきた。

企業物価統計でみると、石油などの輸入物価は8月に契約通貨ベースで前年比上昇幅が縮小した。これに対し、円ベースでは上昇幅が拡大した。輸入物価の上昇は、1カ月後に国内企業物価に波及するとの分析もある。

こうした点を踏まえ、RBS証券・チーフエコノミストの西岡純子氏は、年初予想よりCPIが0.1─0.2%ポイント高目に推移していると指摘。「足元の円安の再燃が物価圧力を高めうる。企業の価格転嫁行動も以前より積極的になっており、今後も円安が続くと考えるならば、輸入価格の上昇を通じて物価は、さらに押し上げられやすい」とみている。

そのうえで「コアCPI見通しを14年度1.2%から1.3%、15年度を1.3%から1.6%に上方修正し、16年度は新たに1.9%と日銀物価見通しに接近する展開を予想する」としている。

また、大和総研・チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「エネルギーのプラス寄与が縮小する見込みであるため、徐々にCPIの前年比上昇幅が縮小し、短期的に1%を割り込む可能性も高い。ただ、8月以降の円安進行が今後の物価上昇要因となる点に留意が必要」とみている。

13年度経済白書によると、名目実効為替レートの1%ポイントの円安により、コアCPIは0.03%ポイント程度押し上げられることになるという。

しかし、熊谷氏は「現在はデフレ状況ではなく、企業の価格転嫁の動きが継続していることを踏まえると、今回の円安の影響は0.03%ポイントより上振れする可能性がある」と見ている。

<日銀、円安の景気拡大効果見込む>

物価目標2%を掲げている日銀では、足元の原油価格等の下落と、円安による下支え効果を踏まえ、当面の物価上昇率は足元のプラス1.1%から大きく上下する可能性は低いとみているもようだ。

また、従来のような円安による輸出数量効果があまり期待できないとしても、円建ての日本企業の収益は上振れるため、今年冬のボーナス増など雇用・所得環境が改善され、それが消費に波及するなどプラス効果も期待しているとみられる。

このような実体経済の拡大とひっ迫する労働需給や賃金上昇の動きをみつつ、物価上昇のメカニズムが動き出し始めたと受け止める声が、日銀内にはある。

ただ、10─12月にかけて消費停滞などにより、景気の回復が思わしくなければ、企業の価格転嫁が進まず、一部の商品で値下げが起きて物価上昇率が想定よりも下振れするリスクシナリオのがい然性が高まりかねない。

さらに生産を起点にした下振れが長期化すれば企業収益に影響し、日銀が重視している来年春の賃上げ(春闘)の行方に大きな影響が出ることも考えられる。

円安による景気プラス効果と、消費増税の反動減長期化や輸出の伸び悩みなどのマイナス効果が、足し合わせてどうなるのか。その点が、この先の物価動向に大きな影響を及ぼしそうだ。

日銀は9月短観で企業マインドの動向と製品需給、労働需給、企業物価見通しを注視することになるとみられる。

(中川泉 竹本能文 編集:田巻一彦)

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