日銀追加緩和に頼らない円安・株高、CPI鈍化でも期待は後退

盛り上がらない緩和期待

9月26日、日銀追加緩和に頼らない円安・株高、CPIが鈍化しても期待は後退している。写真は2010年に撮影された円紙幣(ロイター/Yuriko Nakao )

[東京 26日 ロイター] - 現在の円安・株高相場のメーンエンジンは日銀追加緩和への期待ではない。物価は足踏みしているが、黒田東彦日銀総裁が強気姿勢を崩さないほか、円安による 押し上げ効果も予想され、むしろ期待は後退している。相場上昇の主因は早期の米利上げ観測など海外材料だ。円安デメリットも懸念される中で、追加緩和は容 易ではないとの見方が広がっているが、それだけに決定されればサプライズになりそうだ。

<盛り上がらない緩和期待>

8月のコア全国消費者物価指数(CPI)は前年比で3.1%上昇と、市場予想の3.2%上昇を下回った。消費税引き上げの影響分2%ポイント(日銀 試算)を差し引くと1.1%の上昇にとどまり、昨年10月以来の低い伸びとなった。原油価格やLNG価格は下落しているほか、食料品も当面減速が強まると みられるなど、足元の物価圧迫要因は多い。

しかしながら、マーケットの日銀追加緩和期待は一向に高まらない。理由は2つある。1つは、足元の急速な円安進行が輸入物価の押し上げ要因になると 予想されているためだ。効果発生にタイムラグがあるが、シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏の試算では、2015年のコアCPIを約 0.4%ポイント押し上げる。

黒田日銀総裁の変わらない強気姿勢も市場で緩和期待が高まらない理由の1つだ。18日の全国証券大会のあいさつでは、「量的・質的金融緩和」の推進 によって、2%の物価安定目標の実現へ順調な道筋をたどっていると指摘。経済・物価情勢が改善に向かう中で「金融システムや資本市場においても、前向きな 動きが明確になってきている」と変わらぬ自信を見せた。

HSBCの日本担当エコノミスト、デバリエいづみ氏は「物価はやや弱いが、足元の円安が下支えするだろう。1%を大きく割り込むことはないとみてい る。さらに黒田総裁の強気姿勢に一切のブレがない。ここに変化がない限り、海外投資家の日銀追加緩和期待が盛り上がるのは難しい」との見方を示す。

<多様な円安材料>

日銀の追加緩和期待は、かつて円安・株高のメーンエンジンだったが、いまの相場はそれに頼らなくなっている。8月CPIを受けて、市場では「10月 31日の展望リポートと同時の追加緩和を予想していたが、可能性はかなり低くなった」(外資系証券エコノミスト)との声が出たが、日本株やドル/円は意外 なほど底堅い。

26日の日経平均<.N225>は一時250円以上、下落したが、終値は144円まで下げ幅を縮小した。配当権利落ち分が約90円ある ため、実質的には50円安強のレベルだ。25日の米ダウ<.DJI>が264ドル安したのに比べると、下値の堅さが目立つ。ドル/円も前日は 108円台半ばまで下落したものの、すぐさま109円円台を回復する底堅さを示した。

いまのドル高/円安の材料は多様だ。海外要因としては利上げが視界に入る米金融政策、国内要因では、貿易赤字やGPIF(年金積立金管理運用独立行 政法人)の外債投資期待など、「日銀追加緩和に頼らなくても円安材料には困らない」(東海東京調査センターのシニアストラテジスト、柴田秀樹氏)状況だ。 円安基調が変わらなければ、大企業・製造業の影響が大きい日経平均などもさらなる上値が期待できると強気派はみる。

<微妙な消費増税との関係>

それゆえ、もし追加緩和が決定されれば、市場にとって大きなサプライズとなりそうだ。短期的には円安・株高トレンドを加速させるとみられている。
しかし、長期的に円安・株高相場や日本経済にとってプラスになるかは微妙といえる。今秋にも安倍晋三首相が判断する10%への消費増税との絡みがあるためだ。

市場では「円安によって物価が支えられ、強気な黒田総裁の姿勢が続くなかで、もし追加緩和が決定されるとすれば、それは消費増税が決定され、財政政策とパッケージで追加緩和が打ち出される場合だ」(SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏)との見方が多い。

日銀の追加緩和は円安・株高材料としても、10%への消費増税は国内景気を落ち込ませるリスクがある。「今年4月の8%への消費増税は悪影響が大きかった。個人的には10%への引き上げは見送るべきだと考えている」(HSBCのデバリエ氏)。

追加緩和を含めた政策パッケージが市場に受けられるかはまだわからない。実際に10%に引き上げられるのは来年10月だとしても、消費増税の悪影響への懸念が強ければ、追加緩和のプラス効果を打ち消してしまうおそれもある。
(伊賀大記 編集:内田慎一)

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