世界的に荒れる金融市場、揺らぐ世界経済や米金融政策への見方

10月10日、世界的にマーケットが荒れている。金利は反転低下し、ドルも反落、株式市場は連日の乱高下だ。強気相場の反動だけでなく、市場心理の不安定化が大きく作用している。2013年6月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 10日 ロイター] - 世界的にマーケットが荒れている。金利は反転低下し、ドルも反落、株式市場は連日の乱高下だ。強気相場の反動だけでなく、市場心理の不安定化が大きく作用している。背景にあるのは世界的な景況感の悪化や、弱気化している米利上げ観測などだ。

この動きが一時的な調整なのか、それとも新たなトレンド形成の始まりなのか。市場の警戒感はにわかに強くなってきた。

<材料なき下落>

明確な売り材料があったわけではなかった。9日の米市場でダウ<.DJI>は334ドルと今年最大幅の下落となったが、「これという売り材料はなかった。ここまで下落する理由がわからない」(米系証券トレーダー)との声は多い。とにかく売りたいという最近の市場ムードが色濃く出たようだ。

米ダウが200ドル以上、上下するのは今月に入って早くも3度目。バーナンキ前FRB(米連邦準備理事会)議長が、量的緩和縮小を示唆して世界市場が荒れていた昨年6月以来の多さだ。VIX指数<.VIX>など各種ボラティリティ指数も上昇してきている。

マーケットを不安定化させた第1の要因は、米株などリスク資産価格への高値警戒感だ。S&P500企業でみた予想PER(株価収益率)は15倍程度と割高感が強いわけではない。

だが、リーマン・ショック後の2009年3月に付けた安値から、期間は5年半、上昇率は200%に達する。今年9月19日に付けた史上最高値からの調整率は4%強に過ぎず「もう少し下落しても、調整の範囲内だ」(邦銀)との声も多い。

では調整に入った原因は何か──。特定のきっかけはないものの、世界経済と米金融政策に対する見方が揺らいだことで、市場心理が不安定化したためだとみられている。欧州や中国の景気が芳しくないとの認識は広く市場で共有されていたものの、最近の欧州や日本の経済指標などが悪化し、マーケットの景況感が一段と弱くなってきたという。

「世界経済の機関車役である米経済は依然として堅調だが、米国だけで欧州や中国、そして日本の経済をけん引していくには荷が重すぎるようだと、マーケットは感じ始めている。米経済は相対的に強く、長期的なドル高ストーリーに変わりはないものの、市場の景況感が揺らいでいることで、しばらくは動きの荒い相場展開となりそうだ」と三井住友銀行・シニアグローバルマーケットアナリストの岡川聡氏は話す。

<「機関車」のスピード減速を懸念>

米経済は世界の「機関車」役によく例えられる。「機関車」は今のところ堅調ではあるものの、欧州や中国、日本などの経済が弱くなり、けん引する「車両」が重くなっていることで、米金融政策や米ドルへの見方も揺らいでいるという。

米経済が順調に回復していけば、米連邦準備理事会(FRB)は来年6月にも利上げを決定するとの見方が市場ではコンセンサスだった。そのシナリオをベースにドルは上昇、ドル/円<JPY=EBS>は今月1日、6年ぶりの110円を付けていた。

しかし、8日に公表された9月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、世界景気に対し慎重な見方を示し、市場の利上げ予想時期は後退。米短期金利先物のレートは2015年第4・四半期(10─12月)の利上げ開始を織り込む水準に後退している。その結果、ドル/円は一時107円半ばまで下落した。円安を買い材料とする日本株も調整を深めている。

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は「ドル高政策への警戒感も市場が調整に入った要因だろう。グローバルな世界景気減速が米経済に波及し、米国もドル高が耐えられなくなれば、他国の通貨安政策も見直しを迫られる。米国が選挙の季節に入ることも、市場の見方を不安定化させている」と指摘する。

<溜まるショートポジション>

ただ、世界経済が崩壊するような不安が、マーケット全体に広がっているわけではない。VIX指数も上昇したとはいえ、まだ18ポイント台。米量的緩和の早期縮小観測が強まった昨年6月、米財政問題がクローズアップされた昨年10月、資金巻き戻しが起きた今年2月に付けていた20ポイントにはまだ距離がある。

反発エネルギーも溜まってきている。東証が発表する株式の空売り比率は9日時点では36.2%。10月3日に36.5%と今年最高に上昇した後。6日の日経平均<.N225>が一時、260円高となったことでショートカバーが進み33.8%まで低下したが、その後再び上昇傾向にある。弱気が増えている証拠ではあるが、いずれ買い戻されるため、きっかけがあれば、自律反発に転じる見通しだ。

ドル安にもかかわらず原油価格の下落が進んでいる。原油価格下落は資源株の下落を通じて米株下落の要因にもなっている。だが、原油市場では、投機的な新規ショートが入ってきたことによるオーバーシュートの雰囲気も強まってきたという。

米原油先物<Clc1>は10日の市場で1バレル83.59ドルと2012年以来の安値水準まで下落したが、「シェールガスのコスト面などと比較しても82ドル程度がせいぜいではないか。新規ショートも多く入ってきているようであり、きっかけ次第で反発するとみている」とアストマックス投信投資顧問コモディティ運用部シニアファンドマネージャーの江守哲氏は話す。

現時点では、投資家心理の不安定化を要因とした金融市場の乱高下の範囲内との見方が多い。しかし、資産価格の下落と経済悪化の悪循環が始まってしまえば、調整とは言っていられなくなる。世界経済が一段と弱くなっているだけに、警戒も怠れない。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

ReutersCopyright
copyright (C) 2017 Thomson Reuters 無断転載を禁じます

ページトップ