アベノミクスに原油安の「神風」、円安デメリットを軽減へ

ロイター
12月1日、アベノミクスに原油安という「神風」が吹いている。東京商品取引所で11月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] - アベノミクスに原油安という「神風」が吹いた。日本にとって原油安は減税と同じ効果を持つとされ、円安(ドル高)要因というだけでなく、輸入価格の上昇という円安のデメリットを軽減してくれる。物価が上がりにくくはなるが、半面で追加緩和期待も強まりやすい。ただ、原油安の背景は世界的な需要不足であり、過熱気味の円安・株高には警戒感も出ている。

円安と原油安、トータルでプラス

アベノミクスの最大の副作用と言えば、輸入物価の上昇だろう。80円割れの水準から119円に進行した円安は、輸出企業にはプラスだったが、食料品など輸入品に原料の大部分を頼っている製品の多くは値上げされ、8%への消費増税も加わって、家計を直撃した。

足元で進む原油安は、この円安デメリットを軽減してくれる効果がある。資源エネルギー庁のデータによると、27日時点のガソリン店頭価格(レギュラー、全国平均)は158.3円。7月14日に169.9円の今年ピークを付けて以来、19週連続で低下している。

原油安が、乳製品など他の輸入品に直接的に影響するわけではないが、輸入製品の工場にとっても、エネルギーコストの低下は価格を抑える要因として大きなプラス。

家計でもガソリンや灯油の価格下落で浮いたお金を他に回すことができる。「原油安は減税と同様の効果を持つ」(アムンディ・ジャパン投資情報部長の濱崎優氏)と言われるゆえんだ。

日本総研・調査部副主任研究員の藤山光雄氏の試算によると、原油価格が10ドル/バレル下落すると、原油・LNG輸入額が年間ベースで約2兆円減少する相関性がある。一方、円安が対ドルで10円進むと、原油・LNG輸入額が2.2兆円増加するという。2013年平均の110ドル、100円と比べて、足元で原油が40ドル、円安が18円強進んでおり、このままの状態が続けば、8兆円と4兆円の差し引きで4兆円分の原油・LNG輸入額が減少する計算となる。

足元の原油安は円安(ドル高)要因となっており、日本経済に与えるトータルでの影響度は読みにくいが「現時点では原油・LNG輸入額に与える影響は、円安よりも価格下落のプラス効果の方が大きい」(藤山氏)という。貿易収支の改善は国内総生産(GDP)の押し上げ要因であり、4兆円の改善はGDPを0.8%程度引き上げる。

日本株にはメリット多く

原油安・円安の組み合わせは、日本株にとって追い風だ。円安のデメリットを原油安が相殺してくれるだけでなく、円安への耐性値が上がることで追加緩和期待も強まるためだ。さらに衆院選において自民党の追い風となるとの指摘も出てきた。

「野党は、衆院選挙で輸入物価上昇というアベノミクスのデメリットを攻撃材料しにくくなる。一方、安倍晋三首相にとっては、日銀の追加緩和期待が加わり、株価が上昇すれば絶好のアピールポイントになる」と東海東京調査センターのシニアストラテジスト、柴田秀樹氏は指摘する。

株式市場では「衆院選での自民党の大勝は、長期政権による政策期待を高めるとして株高要因になる」(外資系証券)との見方が多い。円安と原油安のダブルメリットをはやし、1日の東京市場で、日経平均<.N225>は年初来高値を更新し、約7年4カ月ぶりとなる1万7600円台を付けた。

原油安の背景は需要低迷

ただ、原油安の背景には、世界的な需要低迷がある。中国など新興国で期待ほど需要が伸びず、供給過多に陥ったことが価格下落の大きな要因だ。OPECは増産したわけでなく、減産を「見送った」だけだ。それにもかかわらず価格が急落するのは、投機的な動きを助長しやすい緩んだ需給状況がベースにある。

原油安には景気押し上げ効果があるため、いずれ原油需要も回復するとみられるが、需要が回復すれば原油価格の下落も止まる。いいことばかりが続くわけではない。

一方、ロシア国債の保証コストが2011年10月以来約3年ぶりの高水準となるなど、原油安は資源国にとってはデメリットもある。

日本株には過熱感も出てきた。1万7600円はPER15倍とすれば今期10%増益が必要になる水準だ。日経平均は高値を更新したが、1日の東証1部売買代金は2兆1972億円と盛り上がりを欠いた。「海外勢がやや買い越しだが、国内勢はリバランス中心」(大手証券トレーダー)という。

原油安はアベノミクスに追い風だが、長期的な日本の潜在成長力を高めてくれるわけではない。外部環境に過度に依存した相場形成が続けば、「結局、何も変わらなかった」との失望も大きくなる。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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