アベノミクスの成否がわかる「毎月勤労統計」

増加に転じた給与も実質はまだマイナス

岡田 晃
アベノミクスの継続で実質賃金の上昇ははたして実現するのか(撮影:尾形文繁)

 総選挙は自民・公明の与党圧勝で終わりましたが、選挙戦の争点の一つとなったのが賃金の上昇でした。「アベノミクスによって景気はある程度回復したものの、賃金上昇が伴っていない」などとよく指摘されます。これをマクロデータで確認してみましょう。

 厚生労働省が発表する「毎月勤労統計調査」で現金給与総額の推移を見ると、10月の現金給与総額は一人当たり26万7212円で、前年同月比0.2%の増加となりました。前年同月比の推移を見ると、2012年まではマイナス基調が続いていましたが、13年ごろに下げ止まり、14年3月以降は8カ月連続プラスとなっています。 

 特に注目されるのは、今年7月は前年同月比2.4%増と月次で17年6カ月ぶりの高い伸びになったことです。これは夏のボーナスが大幅に伸びたのが背景です。最近のボーナス期をさかのぼると、13年12月は0.5%増にとどまりました。同年7月は0.1%減、12年12月1.7%減、同年7月1.6%減となっています。 

 これらを総合すると、アベノミクス1年目の13年で賃金減少に歯止めがかかり、2年目の今年になってわずかながら上昇に転じたことを示しており、特に企業はボーナスの増額を本格化させたのが現状のようです。

 つまり金額自体で言えば、すでに賃金は増加し始めているのです。「最近の物価上昇分を差し引くと実質的に賃金は減っている」との言い分はそのとおりですが、12年以前のように、給与の金額そのものが減少していた時期と同列に論じるのは適切ではありません。

 さかのぼると、現金給与総額は1998年からマイナス基調が続いていました。まさに日本経済がデフレに陥り、企業の売り上げも利益も減少する中で人件費も削った結果、給与の減少が続いていたわけです。しかし、ここへきて企業はわずかながらも給与の金額自体を増やし始めたのですから、明らかに流れは変わったと言えます。経済活動の中身を分析するうえで、この変化は決して過小評価すべきではないでしょう。

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