地方自治体のヤル気をそぐ国の財源補てん

「地方創生」は実現できるのか?

溝端 幹雄
「地方創生」の成否が現政権の今後の行方を大きく左右する可能性もある(写真は石破茂・地方創生担当相、撮影:尾形文繁)

 「人口20万人以上」などの基準を満たした都市を対象に都道府県の権限の一部を委譲していた「特例市」の制度が1日から廃止。従来の「中核市」と共に新しい「中核市」として一体化され、保健所の設置などが可能になった。4月の統一地方選に続いて5月17日には「大阪都構想」の賛否を決める大阪市の住民投票も実施される。今年度中には各自治体が地方創生の具体的な施策として「地方人口ビジョン」「地方版総合戦略」を策定するなど、地方が一段と注目されそうだ。

 地方創生をいかに実現へ結び付けていくかが、今後の安倍政権の行方を探るうえで大きなポイントになる。昨年12月の「まち・ひと・しごと創生本部」において政府は地方創生の具体策を発表し、地方の民間企業活躍の後押しにつながりそうな施策を数多く盛り込んだ。

 そうした施策を担うのが地方自治体である。主に行政面では地方創生特区による規制改革の活用、財政面では補助金や優遇税制の利用などが考えられるが、そもそも地方交付税交付金(以下、地方交付税)による国からの財源補填に依存した今の地方財政制度の下で、地方自治体が地方創生に真剣に取り組むインセンティブはあるのだろうか。

 国も含めた政府全体の歳出に占める地方の割合は6割と多いが、歳入は4割しかなく、その差は地方交付税や国庫支出金による国から地方自治体への財政移転によって調整されている。地方自治体が地方創生を行うインセンティブとして最も大きいのは地方税収の増加だろう。地方財政が厳しい中で税収が増加すれば、住民の意向を反映した独自の政策が行いやすくなる。

 しかし、現在の地方交付税制度では、地方創生などで税収を増やすと交付税が大幅に減額されて、結果的に地方自治体の歳入がそれほど増えない構造だ。また、交付税算定のために毎年策定される地方財政計画では、高齢化が進んで疲弊した地域ほど配慮がなされた財政移転が行われやすく、そうした状況に陥らないようにしようという地方自治体の努力を妨げるような仕組みが作られている。

 主に地方単独事業の実施のために発行される地方債や、地方自治体の赤字公債として発行される臨時財政対策債の償還には、将来の地方交付税が手当てされている。こうした現行の地方財政制度では、地方自治体の予算制約に対する意識の希薄化をもたらし、財政的な危機感を抱きにくいものにさせかねない。

 もちろん、2007年に成立した地方財政健全化法の施行で、従来に比べると地方自治体に財政の健全化を促す仕組みは整ってきた。一方で、最低限の行政サービスを維持するためには地方交付税による一定の財源調整が必要なのは言うまでもない。しかし、地方自治体の税収の引き上げ意欲を阻害しかねない現行の地方交付税制度の見直しも必要ではないだろうか。地方自治体の努力がそのまま地方創生につながるような地方財政システムへの改革は国の歳出削減にもつながり、政府全体の財政健全化にも貢献するとみられる。

 大和総研 主任研究員 溝端 幹雄

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