企業は横並び意識を変えられるのか

コーポレート・ガバナンス改革の要諦

引頭 麻実

みずほフィナンシャルグループ (8411)は「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に「意義が認められる場合を除いて政策目的の株式を保有しない」ことを盛り込んだ。株式市場にはこれをきっかけに、「保有株式の売却代金を自己株買いなどに充当するのでは」との思惑が広がり、同社の株価が上昇した(撮影:梅谷秀司)

 この2年間でコーポレートガバナンスに関する改革は目覚ましい進歩を遂げた。2014年2月に金融庁から発表された日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~)を手始めに、15年5月に改正会社法が施行された。

 同年3月には金融庁および東京証券取引所が事務局となった有識者会議でコーポレートガバナンス・コード原案が提示され、今年5月には東京証券取引所でそれを実装すべく規則改定が行われ、6月1日に施行された。公開企業はコーポレートガバナンス報告書を遅くても年末までに提出することが義務づけられている。

 ガバナンス改革への関心は非常に高い。金融庁によれば、公表から1年以上経過しているスチュワードシップ・コードでは投信・投資顧問会社、信託銀行など累計184社の機関投資家が3月12日までにコード受け入れを表明したとされる。

 改正会社法および二つのコードの大きな特徴は「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain 、遵守せよ、さもなければ説明せよ)」というソフト・ロー(法的な拘束力を持たないが、社会として従うべき規範)であることだ。「ルールベース・アプローチ(細則主義)」ではなく、「プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)」が採用されたことは日本にとって大きな転換点になったとも言える。

 ルールベースとプリンシプルベースの決定的な違いは、いわゆる“雛型”が存在しないことだ。つまり、各企業自身が自ら考えなければならないということにほかならない。

 日本ではこれまでルールベース・アプローチをむしろ心地よいものとして受け入れてきた傾向が否めない。たとえば、東京証券取引所の開示規則である。これには法的拘束力がなくソフト・ローという位置づけではあるが、手引書は実に丁寧で、開示例として雛型も掲載されている。公開企業はそれをあたかもルールとして受け止め、ある意味、横並びで規則を遵守してきた。

 その結果何が起こったか。たとえば適時開示である決算短信の東証による雛型には任意開示の箇所もあるが、多くの企業が“フルスペック”での開示を行っている。規則ではなく投資家やアナリストの声として求められている決算説明会も多くの企業が開催している。しかし、すべての企業の説明会が満員御礼かといえばそうではない。企業によって参加人数に大きな差がある。

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