中国人「爆買い」のターゲットは医薬品

インバウンド消費は倹約令の反動?

角田 佐哉香
インバウンド消費関連株の「本命」ラオックスの店舗は多くの中国人客でにぎわう(撮影:梅谷秀司)
 日本の企業業績を下支えするインバウンド(訪日外国人客)消費。観光地の土産物店などで特に目立つのが中国人の姿だ。今年1~5月に中国から日本を訪れた人の数は171万人あまりと国・地域別では最も多く、訪日外国人客全体の2割強を占める。「爆買い」の実態や今後の行方などを三菱総合研究所の佐野紳也・主席研究部長と劉瀟瀟(りゅう・しょうしょう)研究員に聞いた。

ーー1~5月に日本を訪れた中国人は前年同期を約6%上回る伸びとなっています。

三菱総合研究所の佐野紳也・主席研究部長

 (佐野)中国人にはこれまで日本へ旅行に行きたいという気持ちが強かったが、政治的な背景もあって、押さえられてきた経緯がある。それが徐々に緩くなってきたのが訪日を後押ししている。中国人に対する日本のビザの発給要件は厳しいものの、所得水準の上昇でそれをクリアする人が増えてきたのも増加の一因だ。

 格安航空会社(LCC)の就航も増え、安価で日本へ来ることができるようになったのも大きな理由。LCCを利用するツアーは多い。

ーー2013年の後半ごろから回復が顕著です。

 (佐野)円安が進んだ時期とも一致する。中国人からみると割安感が強まってきた。微博(ウェイボー)などのSNSを通じて、「日本に行って良かった」という内容のメッセージも広がり、「閾値」ともいうべき水準を超えてきた感がある。

 ()中国人はSNSで日本の写真などをシェアする。そこには、和服を着た写真などがアップされている。日本の良さを取り上げたような友人のコメントが掲載されていれば、「友達が言っているのだから間違いない」などと受け止める。 

ーー今年に入って水準が一段と上がりました。

 (佐野)人民元高・円安の急激な進行によるところが大きい。真偽のほどは定かではないが、国内では「倹約令」で派手な消費ができず、日本での消費におカネを振り向けさせている、との指摘もある。習近平政権の誕生以降、豪華な消費や宴会などで「目立ってはいけない」状況が続いている。海外に資産を逃避させる動きも進行中だ。

ーー日本を訪れる中国人の所得水準はどの程度なのでしょうか。

 (佐野)世帯年収が10万元(約200万円)を上回る層が急増している。中国人の全人口13億人のうち、10万元の所得水準を超えるのは約2億人。10万元あれば、個人旅行は難しくともツアー旅行には参加できる。北京の場合、1人当たりの平均年収は4万5000元程度。日本を訪れている人の割合は約2%だ。

 1人当たりの所得が2万5000元ぐらいだとビザの発給を受けることができる。内陸部でも2万5000元~3万元の所得を手にする人が増え、日本を訪れるようになった。

ーー中国人の買い物の傾向は。

 (佐野)富裕層は当然、おカネを使う。これに対して、中間層の消費額は少ないと思われがちだが、実はそうでもない。高級ブランドなどにも結構、おカネを費やす。

 買い物のパターンは大きく3つ。1つは「自分買い」。自分の欲しいものを買う。次に「プレゼント買い」。そして、「頼まれ買い」。特に、地方には日本へ来たことのある人が少なく、誰かが「日本へ行く」となれば、「買ってきてくれ」と頼むケースが多い。重慶から日本を訪れた人が先日、「職場の人に配る」と言ってストッキングを1000足まとめ買いしていった。

 家電量販店で「魔法瓶を全部ください」という人もいる。日本の魔法瓶が人気なのは品質の高さ。中国の魔法瓶は中身がこぼれるうえ、保温にも問題がある。

 ()日本人には日本製品の品質は驚くべきレベルではないのかもしれないが、世界では高い水準と受け止められている。

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