中国にも信頼できる経済指標があったぞ

世界同時株安の引き金に

岡田 晃
金融市場では人民元切り下げをきっかけに「中国リスク」が台頭(撮影:今井康一)

 中国の景気悪化懸念が強まり、世界同時株安が止まりません。その直接のきっかけとなったのは、「財新製造業PMI」という指標です。21日に発表された8月の速報値が47.1と、好不況の判断の分かれ目となる50を6カ月連続で下回り2009年3月以来、6年5カ月ぶりの低水準になりました。これまでも景気減速を示す指標が相次いでいましたが、特に財新PMIは景気の変化を敏感に表すデータであるため、一気に中国経済への懸念が広がりました。

 「財新PMI」というのは聞きなれない指標だと思う人が多いかもしれませんが、これは今年6月までHSBCが発表していたPMI(購買担当者景況感指数)のことです。この連載で以前、取り上げたことがあります(4月29日付「各国景気を横並びで比較できちゃう指標って何だ?」)。中国国内の民間企業を中心とする製造業400社あまりの購買担当者を対象に、新規受注、生産、価格、購買状況などについてアンケート調査し、その結果を指数化したものです。

 企業の購買担当者は自社製品の売り上げや市場動向、生産、出荷など幅広い部門を見渡しながら、それに基づいて部品や原材料の仕入れを行う立場にあるため、彼らの景況感が実際の数カ月先の景気を先取りする重要な指標になっているのです。

 PMIはもともと英国の金融情報大手のマークイット社が日米欧やアジア、新興国など30カ国あまりで各国ごとに算出しています。中国では従来、HSBCと共同で調査していましたが、同調査から撤退したため地元メディアの財新と新たに提携し、名称を「財新PMI」としたものです。調査方法などは従来と変わらないので、HSBCがかかわっていたときのデータから継続して見ることができます。

 最近のPMIの推移を見ると、中国の景気減速ぶりが鮮明になっています。11年ごろから低下傾向が始まりましたが、それでも50を挟んで一進一退の動きが続いていました。しかし、14年12月と15年1月に再び50割れとなりました。今年2月にはわずかに50を上回ったものの2月からは6カ月連続で50を下回り、水準低下の幅も大きくなっています。8月のPMIは6年5カ月ぶりの低水準だったことで、景気の悪化懸念が広がったというわけです。

 ちなみに、マークイット社の各国別PMIのうち、アジアの13カ国・地域については日本経済新聞社と提携し、「日経PMI」として国別のデータの公表を7月から開始しています。PMIは欧米も含め国によって注目度は異なりますが、各国のデータを同じ調査方法、同じ基準で比べられることもあって今後、ますます注目度が高くなると見られます。

 中国では政府発表の統計の信用性をめぐって疑念がつきまといますが、PMIについては調査主体やその方法から見て、他の国のデータと同程度の信頼性を置くことができるでしょう。それだけ市場への影響力も大きくなりそうです。

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