TPPきっかけに、売られすぎ株のリバウンドが始まる

業績好調株に上値トライ余地

古庄 英一
TPPは大筋合意したものの最終的には議会の批准というハードルが待ち構え、首尾よく発効しても2年後だ(写真は2013年の全農による反対集会、撮影:尾形文繁)

 足元の物色動向を振り返る。「国慶節」休暇の中国人観光客で連想を誘ったインバウンド関連は、連休が終わる6~7日の両日にあっけなく手仕舞われた。利食った資金は、1週間前はネガティブな見方が大半だったTPPやノーベル賞の関連銘柄に向かった。

 来週は13日のJ&J、JPモルガン・チェース、インテルを皮切りに、米国主要企業の四半期決算発表が連日続く。決算内容への反応は気になるところだが、足元の関心はNY原油先物市況(WTI)の動向だ。シリア情勢の緊迫化でWTIが1バレル=50ドルに回復した場合、年内利上げの先送り論は後退するし、資源関連株の買い戻しでNY株式市況は堅調に推移するだろう。

 日本の四半期決算発表は、2月期が多い小売りサービス関連が先週でほぼ一巡した。3月期は、10月21日にオービックと日本電産が決算を発表するので、この日から本格化するとみてよい。この間は日経新聞などの業績観測記事が取引材料となるため、保有銘柄の寄り付きが気になるのであれば、事前にチェックをしたほうがよさそうだ。

 ところで、TPP大筋合意を受けて、個別の業界や企業の影響と対応策が物色テーマとして急浮上した。売られすぎの水準に甘んじでいた業績好調な主力株は修正リバウンドのきっかけをつかんだ。三菱商事(8058)パナソニック(6752)マツダ(7261)などは9日に上げ足を速め、勢いを来週に持ち越した。NY市況が堅調であれば、チャート形状に上値トライの余地がある銘柄を中心に買い増しや押し目買いが狙えるだろう。

 ただ、TPPはこれまでどおり、業績の裏づけが乏しく、連想買い、思惑買いにすぎない。誰でも想像がつくメリットは、すでに株価が織り込んでしまったといえる。今回テレビの報道番組の取材を受けた回転寿司チェーンのくらコーポレーション(2695)の場合、先週は3700円台後半だった株価が3500円前後に下落した。会社側が「カリフォルニア米使用の検討を進めていくような誤解を与える報道」について「100%国産米のみ使用を一切切り替える予定はない」と自社HP上で釈明したことが嫌気されたようだ。

 くらコーポレーションの広報IRが釈明したように、TPPにまつわる経営課題は利害が複雑に絡み合う。本音と建前の使い分けがあるのが自然と受け止める必要があるだろう。あくまで参加国の担当閣僚が大筋合意した段階であって、国内法制ルールとのすり合わせや圧力団体への説明はこれからだ。最終的には各国議会の批准という大ハードルがあり、首尾よく発効できても2年後。この間、大筋で合意事項が部分的に白紙となるケースと修正されるケースの両方の可能性がある。

 また、並行して協議が進む2国間のFTA(自由貿易協定)とTPPを混同した報道が混じることもあるので、気をつけるべきだろう。

 株式市場はその都度、新たな材料を織り込もうとするが、TPPの雲行きが怪しくなるとネガティブな株価テーマともなりうる。5日の大筋合意前後は、林兼産業(2286)クミアイ化学工業(4996)といった食肉や農薬といったわかりやすい分野で関連銘柄が上昇した。今後、詳細な中身が報道されるにしたがい、特許や知的所有権保護など遅れて注目される想定外の銘柄も出てくるだろう。

(「株式ウイークリー編集長」 古庄英一)

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