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世界的景気減速への不安、輸出値ガサ株売られ日経平均は8000円割れも--藤戸則弘・三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長【株価見通しを聞く】

 ギリシャのユーロ離脱懸念やスペインの金融システム不安を背景としたユーロ圏の混乱に加えて、米国や新興国の景気への不安も台頭し、6月4日の東京株式市場は、4日続落した。TOPIXは実に1983年12月以来と日本のバブル後の最安値を更新した。今後の株式相場の見通しについて三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長に聞いた。

--株式市場は3月27日の高値以降、速いピッチで下落し、6月4日にはTOPIXはバブル後の安値を更新してしまいました。

 世界的な景気減速が背景にある。欧州は緊縮財政を背景に深刻な景気後退の状況にあり、ドイツのみが踏ん張って全体を吊り上げる状態にあった。しかし、ドイツも5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値が45.0に低下するなど景気は鈍化してきている。スペインは4月の小売売上高が前年同月比9.8%の落ち込みという悪さだ。

 さらに、欧州向けの輸出が2割近くを占める中国も景気の減速が鮮明になっている。4月の鉱工業生産指数は前年同月比9.3%で、高いものの、市場の事前予想の12.2%を下回り、1ケタ台の伸びに落ちた。これは2009年5月以来のことだ。電力消費量も4月は同3.7%増だったが、昨年の2-11月までは平均で11.8%増だった。

 中国は今年の実質GDP成長率の目標を7.5%に置いているが、実態はもっと減速しているのではないか。さらに中国の景気減速は資源国に影響する。ブラジルは1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比0.8%増と低下した。8回の連続利上げの後、7回の連続利下げを行っているが、効果が出ていない。インドの1-3月期の実質GDP成長率も前年同期比5.3%増であり、8-9%というそれまでの高い成長率を維持できない。

 また、1-3月期に景気指標がよく、暖冬による上振れが大きいのではないかと指摘されていた米国の指標がやはり低下している。6月1日に発表された雇用統計で、5月の非農業部門雇用者数の前月比が6.9万人と市場予想を下回ったのみならず、4月分も11.5万人増から7.7万人増に下方修正された。

 総合すれば、欧州はディープリセッション、新興国は減速、米国は回復度合いが緩慢、ということで、悲観的になっている。

--日本の株式市場の今後の見通しは。

 日本は1998年-2011年の名目成長率の平均がマイナス0.7%である。株価を考える場合、実質でなく名目で見るべきだが、成長していない国の株価は長期で見れば基本的には上がらない。TOPIXに比べて日経平均は高止まりしているとしか言いようがない。

 

 日経平均とTOPIXの倍率(日経平均をTOPIXで割る)は5月末に11.93倍まで上昇しており、足元でも11.92倍だが、2000年から直近までのNT倍率の平均値は10.48倍であり、日経平均は吊り上げられた状態だ。

 

 このところ欧州向けの輸出比率の高いキャノンが急落している。本日の売買代金の上位はトヨタ、キャノン、日産自動車、ファナック、ホンダの順だったが、まさに、値ガサの輸出株が売られている。日経平均は8000円を割る可能性もある。

--各国政府・中央銀行にはどういった政策対応が考えられるか。

 まず、欧州は何といっても、6月17日のギリシャの再選挙を控える中で、キャッシュによるセーフティネットを張らないと市場から信用されない。スペインの銀行の不良債権問題は、スペイン政府に財政の余裕がないと市場が見ているため、EU(欧州連合)が発足を準備しているESM(欧州安定メカニズム)の5000億ユーロの枠を倍に拡大する必要があるが、ドイツが反対している。

 もうひとつは、ECB(欧州中央銀行)、FRB(米連邦準備制度理事会)、日本銀行の3極の中央銀行が、リーマンショック直後のように、協調体制をアピールし、金融緩和を実施することが考えられる。市場へのメッセージが必要だ。

 

 4月27日の追加緩和の結果を見るように、日本銀行単独では効かない。ECBは6月の理事会で利下げを行うことやLTRO(3年もの資金供給オペ)の再度実施の可能性が高まっていると思う。米国でも6月のツイストオペの期限終了をにらんで、QE3(量的緩和第3弾)への期待が高まるだろう。中国は、11月の習近平・李克強新政権発足の前には、リーマンショック後のような大規模な財政出動はできないと見ている。

(大崎明子 =東洋経済オンライン)

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