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世界で流動性相場の株高継続、日本株は円安頭打ちで伸び悩み

[東京 5日 ロイター] -米政府機関閉鎖の影響が懸念されていた10月ISM製造業景気指数は堅調だったが、10月米雇用統計などを控え、市場は米量的緩和の縮小を再び織り込み始めたわけではない。欧米、アジアで過去最高値圏にある株価も多く、流動性相場は継続している。一方で日本株は、円安が頭打ちとなり、高すぎた中間期決算への期待が低下するなか、引き続き上値が重い展開だ。

<ファンドはエクイティに「主役交代」>

 米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の旗艦債券ファンド「トータル・リターン・ファンド」が世界最大の投資信託としての地位を失った。モーニングスターの集計によると、同ファンドの投資資金は2480億ドルになり、運用資産2511億ドルのバンガードの「トータル・ストック・マーケット・インデックス」にトップの座を譲った。

 ボンドからエクイティへの主役交代──。年初予想されていたような債券から株式への「グレート・ローテーション」が起きているわけではない。先進国の金融緩和環境が継続する中で世界的に金利は低位に抑えられている。ただ、その一方で、低金利と潤沢な過剰流動性というエクイティにとってこの上ない好環境が株式などリスク資産へのシフトを促している。

 景気減速が懸念されながら、米国やドイツ、インドやマレーシアなど、欧米アジアの一部の主要株価指数が過去最高値圏にあるのは、いわゆる「不況下の株高」が起きているためだ。「不況とまでは言えないが、景気不透明感が強まる中で、金融緩和環境の長期化期待が株高の背景となっている」(SMBCフレンド証券シニアストラテジストの松野利彦氏)という。

<強い米指標でもテーパリング観測強まらず>

 米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小(テーパリング)に着手するまでの限定的な期間とはいえ、来年3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始なら5カ月以上ある。「その間に低金利と過剰流動性を使ってひともうけしようというムードになっている」(国内証券トレーダー)という。一部株式の高値警戒感は強く、短期的な調整に入る可能性もあるが、マーケットの強気ムードは健在だ。

 実際、10月米ISM製造業指数は4カ月連続で55をオーバーするというハイペースで、2年半ぶりの高水準となり、米政府機関閉鎖に伴う経済への影響に対する不安を後退させたが、マーケットにテーパリングを懸念する動きは乏しい。4日の米ダウは続伸。ドル/円も小動きだ。

 「ISM製造業指数は良かったが、9月の住宅販売保留指数が2010年5月以来の大きな低下となるなど一時の金利上昇の影響もまだ読めない。経済指標が落ち着くまではテーパリングは難しいと市場は踏んでいる」と三菱東京UFJ銀行のシニアマーケットエコノミスト、鈴木敏之氏は指摘する。

<日産ショック>

??\x80一方で、その流動性相場に乗れていないのが日本株だ。日経平均<.N225>は年初から4割近く上昇し、トータルでのパフォーマンスでは抜きんでているが、5月の急落後は1万5000円台を1度も回復できずにいる。

 円安が頭打ちとなり、アベノミクスへの期待感後退があるほか、足元では中間決算への期待感後退も大きい。第1・四半期決算では見送られた業績上方修正が9月中間期に相次ぐとの期待が高かったが、ふたを開けてみると、依然として慎重な企業側の見通しが目立っている。

 その典型的な動きとなったのが、5日の市場では日産自動車<7201.T>だ。もともと販売で強みを持つ新興国での経済減速の影響が懸念されていたとはいえ、自動車販売自体では堅調だとみられていたために、1日に2014年3月期業績予想を引き下げたことによるネガティブ・インパクトは強かった。日産の株価は10%を超える急落。市場では「今後の企業決算への警戒感も出ている」(中堅証券)との声もある。

<割高感はない日本株>

 ただ、日本株は、バリュエーション面で海外株と比べて極めて割高というわけでもないため、上値が重いとはいえ、大崩れの可能性も低いとみられている。

 世界の株式が過去最高値圏を更新するなか、日経平均が1989年12月末の過去最高値3万8915円から約6割低い水準にあるのは、当時の株高が「異常」だったためだ。当時のPER(株価収益率)は70倍程度まで上昇していたが、現在のPERは15倍強と世界水準並みに低下している。

 一方、一株利益は改善方向にあり、日経平均ベースの予想1株利益は1日時点では913円程度で、過去最高水準の960円程度に接近している。一株利益910円でPER70倍なら、日経平均は6万3700円だ。「アナリスト予想が980円程度と高かったために期待感が後退しているが、企業収益は順調な回復を見せている」(ニッセイ基礎研究所・金融研究部門主任研究員の井出真吾氏)という。

 とはいえ、積み上げられた多くの利益は円安効果と人件費削減などリストラ効果が大きい。このままの円安水準が来期も続けば為替換算効果が消えるほか、いつまでもリストラを続けるわけにもいかない。金融緩和もあまり選択肢は残っていない。

 企業業績を前向きな拡大路線に乗せることができるような成長戦略を一日も早く打ち出さなければ、「失望」というしっぺ返しが待ち受けている。

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