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リスクオン全開に距離、世界経済やアベノミクスに不安感

[東京 13日 ロイター] -マーケットには、再び慎重なムードが広がっている。10月米雇用統計の上振れを好感する動きは早くも一服。ドル/円は100円を突破できず、日経平均<.N225>も1万4500円付近で止まってしまった。前日までの株高・円安の反動もあるが、世界経済やアベノミクスへの懸念が手放しのリスクオンを控えさせているとみられている。

<4度目のトライも減速気味>

 日経平均は5月の急落以降、3度上昇波動があったが、いずれも1万5000円に届かなかった。円安基調が止まってしまい、輸出企業の業績改善期待が一服しただけでなく、海外勢からの期待が大きかった成長戦略が足踏みしていることも大きな要因だ。上値も徐々に切り下がっており、「アベノミクスに対する不安の強まりが、日本株の上値抵抗線になっている」(国内証券トレーダー)という。

 一般医薬品(大衆薬)のインターネット販売規制や小規模農業生産者への新たな交付金付与の方針など改革後退を意識させる事例が出る一方、法人税減税や雇用改革など海外勢が期待していた項目は進展が見られない。

 金融緩和と財政出動の追加策がしばらく期待できない中で、アベノミクスの「本丸」といえる成長戦略に後退感が出ていることが投資家の手を引かせている要因だ。

 日本株の需給状況も悪い。MCPアセット・マネジメント証券のチーフ・ストラテジスト、井上哲男氏は、1)株式優遇税制の廃止、2)高水準の裁定買い残、3)空売り規制の廃止──などが日本株の上値を押さえる要因になっていると指摘する。「個人投資家の厚みが出てきており、海外勢の売りを吸収できるようになっているが、需給環境の悪さも日本株が米株に対して相対的にパフォーマンスが劣る要因だ」という。

 日経平均は前日までの2日間で約500円上昇。大台乗せに4度目のトライかとみられたが、13日の市場では早くも利益確定売りに一服。「下値では欧州年金がTOPIX先物やドル/円を買っているようだ」(国内証券)との観測もあり小幅安にとどまったが、上値の重さが払しょくされたわけではない。

 国内企業の中間決算も高い市場の期待値には届かず、国内材料は目ぼしいものがない。しばらくは、為替動向や海外の材料に振れやすい展開が続く見通しだ。

<株式、債券ともに慎重な海外勢>

 頼みの海外勢も、全体的には慎重なスタンスとなっている。

 バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチが12日公表した月次調査では、債券、株式ともに投資家の慎重な姿勢が浮かび上がった。債券アンダーウエートの割合はネットで69%と過去最高水準。株式はオーバーウエートの割合がネットで52%まで増えたものの、割高との回答が2002年1月以来の高水準になった。その一方で、キャッシュバランスは4.6%に上昇した。

 米PIMCOの債券型ファンドが、バンガードの株式型ファンドに投資信託トップの??\xA7を譲ったことは、債券から株式への資金シフトの象徴ともみられている。だが、その動きはまだ緩やかなようだ。PIMCOの「トータル・リターン・ファンド」の米国債、および米政府関連証券の保有比率は10月に上昇していたことが明らかになっている。

 投資家が依然として慎重な背景には景気への懸念がある。10月の米ISM指数が製造業、非製造業ともによかったほか、10月米雇用統計の上振れで、米政府機関閉鎖による悪影響の懸念は後退しているが、マインド系の統計指標にはさえないデータが多い。

 全米独立事業者協会(NFIB)が12日発表した10月の中小企業楽観度指数は、7カ月ぶりの低水準だった。政府機関の一部閉鎖が売り上げの重しとなり、在庫の積み増しを招くとの懸念が広がったという。

 米量的緩和縮小(テーパリング)観測が強まった9月6日に3%を付けた10年米長期金利は、いったん低下した後、上振れた10月の米雇用統計をきっかけに2.7%台まで再び上昇してきている。ただ、市場では「金利はいったん上昇したあとで、また低下するのではないか」(国内投信)との見方が多い。

 三井住友アセットマネジメントの債券運用グループ・シニアファンドマネージャーの深代潤氏は「極端な金融緩和策を一度取ると、元に戻すのは難しい。金融緩和だけでは景気は本格的な回復には至らないのがはっきりしてきたが、止めてしまえば反動が大きくなる。景気が少しでも悪くなればQE4の導入といった可能性もあるのではないか」とみている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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