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財政再建は経済状態をみながら適切に行う必要がある--IMFアジア太平洋事務所長が会見

 国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所の石井詳悟所長が9日、都内で記者会見し、IMFが同日までに公表した世界経済見通しや財政安定報告などに基づく、2012-13年の世界経済見通しについて説明した。

 欧州債務危機については、「財政再建はあまり急激であってはならず、経済状態をみながら行う必要がある」と述べた。

 IMFの最新の世界経済成長見通しによると、2012年と13年の実質GDP成長率の見通しは、世界経済が3.5%(今年1月見通しは3.3%)、13年は4.1%(同3.9%)と上方修正している。米国は12年2.1%(同1.8%)、13年2.4%(同2.2%)、日本は12年2.0%(同1.7%)、13年1.7%(同1.6%)とそれぞれ上方修正し、ユーロ圏も4月時点では12年マイナス0.3%(同マイナス0.5%)とマイナス成長に落ち込むが、13年は0.9%(同0.8%)とプラス成長に回復するとの見通しを示している。

 世界経済が回復する過程での懸念材料として、?先進国(G7)の公的債務が1950年並みの対GDP比120%の水準で高止まりしていること?先進国の財政健全化による景気減速(財政支出の乗数効果を1とした場合に、ポルトガルの場合、2年間で成長率を約6%ポイント引き下げることになると推定)。

 ?自己資本比率充実のために、銀行が進めている資産圧縮の動き(IMFは、欧州に本拠地を置く銀行は2013年までに2.6兆ドル、総資産の7%を圧縮すると予想。この結果、GDP成長率予測値=ベースライン予測と比べて、ユーロ圏のGDPは約1.5%低下すると見込まれている)?住宅価格が下落し続けていることによる米国の家計部門の弱さ、を挙げた。

 今後の下振れリスク要因としては、先進国、新興国ともに、ユーロ危機の再燃と原油価格の高騰を指摘した。ユーロ危機は、貿易と金融という2つのチャネルを通じて、世界経済に影響を与える。原油価格高騰も、原油依存度の高いアジアの新興国などを中心に、2年後にGDPを1%強押し下げる可能性があるという。特に、ベトナムやインドなど、高インフレ諸国では、さらにインフレ圧力を高める恐れがあると警告した。

 そうした下振れのショックが発生した場合に、財政収支が大幅な黒字と良好で、公的債務残高も低いアジア新興国では政策対応の余裕が残されているという。

 しかし、フランス大統領選やギリシャ総選挙を機に、改めてそのあり方が問われている先進国の財政再建の進め方について、石井所長は「財政再建はあまり急激であってはならないし、(財政再建に)逆行するのも困る。景気、経済状態をみながら財政再建を行っていくことが重要だ」と述べた上で、中長期的には財政再建計画をはっきり示して、市場の信頼を回復させることが重要であるとの認識を示した。

(山田 徹也=東洋経済オンライン)

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