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日銀に高まる“圧力” 追加金融緩和の難題

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 9月に追加の金融緩和を決めたばかりの日本銀行だが、政府から一段の緩和を求める声が高まっている。

 前原誠司経済財政担当相は就任早々、「外債購入は金融緩和の有力な材料の一つ」とし、「この立場についた以上、日銀に今の政策目標(消費者物価上昇率1%の達成)を実行する気構えがあるのかを厳しく見ていく」と強気の姿勢を示した。10月5日に行われた日銀の金融政策決定会合に早速出席。日銀法は政府代表の参加を認めているが、通常、副大臣や政務官などにとどまる。閣僚の出席は2003年4月の竹中平蔵氏以来、9年半ぶりだ。次回以降も出席する意向を示した。

相いれない外債購入策

 もっとも、前原担当相の言う外債購入はハードルが高い。仮に日銀が行う場合、購入資金として円売り・ドル買いを行うため、円安誘導を目的とした為替介入と同じ影響を相場に及ぼす。だが、為替相場の安定は外国為替及び外国貿易法で財務相の専権事項と決められている。財務省からの介入指示を受けて日銀が実務を行うのが現行法での仕組みだ。日銀の白川方明総裁も5日の会見で、「外債購入は円安誘導を目的として論じられていると理解している。為替介入は財務相の所管」と淡々と述べるなど、日銀内で外債購入を検討するフシはない。

 その後、前原担当相は「最終的に日銀が考えること」としているが、真意は不明だ。これまでに効果があったとすれば、「閣僚発言を受けて、ひょっとすると日銀が何かするかもしれない」(為替市場関係者)と、円高の抑止力となるような見方が出たことぐらいだろう。

 異例の大臣出席となった5日の決定会合は結局、政策委員の全員一致で金融政策の現状維持を決めた。ただ、次回30日の決定会合は、年に2回公表する経済・物価情勢の展望(展望レポート)で、新たに14年度の成長率と物価見通しを示すため、より注目度が高い。「政府は財政再建に追われて景気対策が打ちにくい。景気が下向きになりそうだと、なおさら金融政策のほうに強い期待がかかる」(東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト)。物議を醸した外債購入のみならず、政府からの注文が強まる可能性は十分にある。

 一方、追加緩和に踏み切るにしても、効果のある一手を打てるかどうかは別問題だ。10年10月に実質ゼロ金利政策を導入し、金利調節で緩和を行う伝統的な政策手段の余地がなくなった。その後は、新しく金融緩和のための「資産買入基金」を創設し、国債を中心に買い入れを進めることで、短期からより長めの金利低下を促してきた。しかし、資金を調達しやすい環境は構築できても、「活発な投資や支出が行われる状況になっていない」(白川総裁)など、根本的な問題は解消されないままだ。日銀は政府への注文として、民間の投資機会を増やすような規制緩和や環境整備の必要性を強調し??\xA6きた。言い換えれば、金融政策は万能薬ではないということだ。

 日銀の統計によれば、リーマンショック前の銀行の新規貸出金利は1%台後半だったが、足元は1%前後になっている。金利の低下が進む一方、民間の資金需要が盛り上がらなければ、貸手である金融機関の利ザヤは縮小していく。「貸し出しで収益を稼ぐビジネスモデルが崩れかねない」(地銀関係者)といった悲痛の声も出ている。金融緩和による銀行の体力低下など副作用を意識しつつ、どのような追加措置を取れるのか。景気回復ムードが消失しただけに、目に見える効果を期待される日銀は、ますます難しい対応を迫られることになる。

(本誌:井下健悟 =週刊東洋経済2012年10月20日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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