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緩和マネーに2つの「軽さ」、反動警戒なお根強く

[東京 15日 ロイター] -米金融緩和の長期化期待を背景に流動性相場が加速している。だが、今の日本株高・円安相場は、マネー相場特有の値動きの軽さと同時に、海外材料頼みという不安要因を抱える。

 アベノミクスや業績改善への期待から盛り上がった今年前半の相場に比べると「中身が軽い」との声もあり、米国景気減速や早期テーパリング(米緩和縮小)などのリスクがはじければ、2つの「軽さ」が一気に相場反転の引き金になる懸念が残っている。

<倉庫株が急伸>

 今回の流動性相場を象徴する動きが倉庫株の上昇だ。倉庫会社は都心に多くの不動産を保有しており、緩和マネーによる不動産価格押し上げ期待から、保有不動産の含み益増加の思惑が働きやすい。

 三井倉庫<9302.T>や住友倉庫<9303.T>など倉庫大手の2013年9月中間期の営業利益は減益で、足元の業績が改善しているわけではない。倉庫株は今年9月にも東京五輪決定を材料に含み資産株として買われるなど、短期資金が入りやすい特徴がある。

 15日の東京株式市場の業種別値上がり率で、倉庫・運輸関連業株<.IWHSE.T>は3位の4・05%。4.73%でトップの証券株<.ISECU.T>も、緩和マネーによる株高、売買増加を期待した買いが中心であり、「典型的な緩和マネー期待の流動性相場」(大手証券)になっており、マネーが舞っている印象すらある。

 一方、ドル/円は100円大台を2カ月ぶりに突破してきているものの、輸出株の上昇率は鈍い。輸送用機器<.ITEQP.T>の値上がり率は1.05%と日経平均<.N225>の1.95%を下回った。円安による業績改善期待は限定的で、あくまで緩和マネーの流入期待が日本株を押し上げている構図だ。

 りそな銀行チーフストラテジストの下出衛氏は「イエレン次期FRB議長の緩和継続示唆をきっかけにリスクを取る動きになっているが、金融相場の継続は業績相場の先送りでもある。それだけ米景気に勢いがないことを示している」と指摘。現状は強い相場のパターンではないとみている、

<短期筋主導の日本株急騰>

 一方、日経平均<.N225>が約半年ぶりに1万5000円大台を回復する中で、東証1部売買代金は2兆5000億円を連日超え、ボリューム的には上昇エネルギーを膨らませているようにもみえる。

 しかし、岡三証券シニアストラテジストの大場敬史氏は「投機筋の先物買いに誘発された裁定買いや、オプション絡みのヘッジ買い、空売りの反動など短期的な動きが株高を演出している」とし、買いの中身は薄いと指摘する。

 日本株には、政権の安定化などを評価した海外年金など長期資金が入っているとみられているが、足元の急伸を主導したのは、「CTA(商品投資顧問業者)など短期筋」(準大手証券)との見方が多い。実際、前日の先物の手口ではCTAの注文を扱っているとされる欧州系証券の買いが日経平均とTOPIXを合わせて6000枚以上入っていた。

 今年前半の?\xB8\x8A昇相場は、アベノミクスという日本独自の材料があったが、今回は海外主導。成長戦略の遅れなどアベノミクスへの失望感も高まっているなかで、海外材料が変調すれば「逃げ足」は速い可能性もある。

<海外材料にはリスクも>

 足元の流動性相場の原動力は、10月米雇用統計で強まったテーパリング(緩和縮小)観測がイエレン発言で後退する一方、米景気は底堅いとの認識はそのまま残っていることだ。景気回復と金融緩和の2つの材料が併存することで、流動性相場の色彩が濃くなっている。

 ただ、景気回復と金融緩和継続という米国の2つの材料は、あくまで市場の期待であり、ともに危うさも抱えている。

 10月米雇用統計で良かったのは非農業部門雇用者数を算出する事業所調査だけで、失業率を測定する家計調査は芳しくなかった。ISM指数は製造業、非製造業ともに好調だが、マインド系の統計は、米財政問題を警戒し、さえないデータが多い。またユーロ圏は利下げするほど景気は鈍く、中国など新興国も来年の景気動向が懸念されている。

 早期のテーパリング(緩和縮小)の可能性も消えたわけではない。イエレン氏の発言をハト派と市場は受け止めたが、中身をよく見れば、緩和を続けることにもリスクがあることにも言及している。「資産買い入れプログラムの終了もしくは金融緩和の早急な終了は危険が伴うし、また同プログラムやより一般的な金融緩和を過度に続けることにもやはり危険が伴うことを意識する必要がある」(14日の公聴会)。

 第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「FOMCは合議制。タカ派の意見が少なくない中で、市場が想定しているよりも早くテーパリングが決定される可能性も残っている」と指摘している。

 早期のテーパリング観測や景気減速懸念が再び強まれば、足元で流動性相場が加速しているだけに反動も大きくなるおそれがあり、警戒が必要だ。

(伊賀大記 編集:北松克朗)

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