機関投資家が重視する「負けない」銘柄選定のポイント

マクロ環境に動じない投資

小松原 周
2016年07月14日
タカス / PIXTA(ピクスタ)

 相場と対峙している限り、マクロサプライズ的なショックはつきものだ。しかし、今回のBrexit(英国のEU離脱)に関しては可能性は低いと思っていたため、本当にそれが起こってしまった時は、驚きとともに、「やれやれ」というような脱力感を感じていた。

 というのも、こういった外部環境の激変が起きると、決まって直後からファンドの解約などが増え、事務処理に追われることになるからだ。相場が下がっている時に、保有している銘柄を売り浴びせなくてはならないというのは、ファンドマネジャーにとっては手痛い打撃となる。

 だが幸運なことに、今回は大手年金基金やソブリン系ファンドなど、主要顧客からの解約は発生しなかった。私がマクロ環境には一切ベットしないタイプのファンドマネジャーであることを、顧客が理解してくれていたおかげである。

 皆さんもそうかもしれないが、私はエコノミストやストラテジストの予想は基本的に当たらないと思っている。なぜなら、経済を構成する要素は数え切れないほど多く、それぞれが予測不能な方向・幅・タイミングで動く。そのため、一人の人間の頭脳や理論によって予想ができるほど、簡単なものではないからだ。

 よって私は、「◯◯についてどう思うか?」とマクロ経済に関する見解を求められた時は、「わかりません」といつも返答する。特定の外部環境を予測したうえで投資判断を行うなど、ナンセンスであると思う。そのようなことをしていたら、とうに成績不振でクビになっていたことだろう。

超過収益の源泉は100%業績に由来

 では何を考えて投資を行っているのかというと、答えは「個別企業の稼ぐ力」ということになる。私は超過収益の源泉は、100%個別企業の業績に由来すると顧客に説明しており、企業業績のリサーチに注力している。

 例えて言うなら、風を読んで航海するのではなく、自力で船を漕いで確実に前進することを目指している。明日はどの方向に風が吹くかと思案する時間と労力があるならば、体力のありそうな漕ぎ手を乗船させた方が、確実に勝利に近くなると信じているのである。

 一般的に、このような企業業績(ファンダメンタルズ)に着目した投資をボトムアップ・アプローチと呼ぶ。どのようなリサーチを行い、どのような業績予想を行い、どのようなバリュエーション手法でターゲット株価を算出しているのかなど、論点はいろいろなものがありすぎて、この場でとても語りきれるものではない。

 ただ、せっかく本稿をご覧の皆さまに何もないのも気が引けるので、投資で勝つために、これだけ押えれば少なくとも負けることはないという銘柄選定のポイントをあえて一つだけ述べる。それは、「毎年収益性を向上させられる会社」を探し出せるかがキーになる。

 事実、バックテストの結果、全上場銘柄のうち、収益性が安定的に改善している銘柄の上位25%で構成したポートフォリオ(毎年リバランスすると仮定)は、過去20年、一年たりとも市場全体のパフォーマンスに負けたことがない。これは日本株だけではなく、米国株でも、欧州株でも、同じ結果となる。

 注意して欲しいのは「利益成長が高そうな会社」ではなく、「収益性が改善していきそうな会社」を見つけるということだ。同じようで、意図するところが違う。「高い利益成長をしそうな会社」は、一言で言えばグロース株ということになるが、この場合はバリュー株相場になってしまったら勝てない。

 一方で「収益性が改善していきそうな会社」は、グロース株の中にもあるし、バリュー株の中にもある。もちろん、大型株・中小型株、内需系・外需系にもあるし、クオリティー株にもあるし、ボロ株のなかにもある。つまり、相場環境やスタイルに依存しないということだ。

 「収益性が安定的に改善している」ということは、会社の事業の競争力が向上していることを意味する。そういった会社は将来の利益成長の確信度が高まり、実績を積むごとにプレミアムが追加されていく。当然と言えば当然なのだが、株式市場は日々の価格変動の中でも、確実にそうした優秀な企業を選別している。

収益性はシンプルに営業利益率を使用

 ちなみに「収益性」という尺度には、最近流行のROE(株価収益率)を含めいろいろなものがあるが、シンプルに営業利益率(営業利益/売上高)を使用するのがよい。償却費の大きい製造業の会社の場合には、EBITDAマージン(償却前の営業利益率)でもよい。

 これらの収益性は、もっともピュアに事業の競争力が反映される。毎年、追加的に費やすコスト以上の売上成長を達成することは、簡単なことではない。強い製品・サービスを持っていたり、競合他社がいなかったり、経営者が優れているなど、収益性の向上の背景には、それを裏付ける決定的に重要な要素が潜んでいるはずである。

 ここまで読んで、「そんなことは知っているよ」と思われる方もいるかもしれない。だが、それは本当だろうか? ボトムアップ・アプローチは、単に当期利益を予想するものではなく、会社本来の競争力に着目する投資手法と言える。私に言わせれば、往々にしてプロでもそこまで真剣にリサーチできていない人が多い。

 繰り返しになるが、収益性が向上していく会社に投資し続けていれば、少なくとも株式投資で大失敗することはない。下げ相場においても、比較的軽い痛手で済むだろう。新たな投資先を発掘する際には、ぜひ挑戦してみてほしい。

こまつばら・あまね/大手資産運用会社の現役ファンドマネジャー・アナリスト。個人情報は非公開としている。徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う、ファンダメンタリスト。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。共著書に『勝つ投資 負けない投資』(個人投資家の片山晃氏と共著、クロスメディア・パブリッシング刊)がある。筆者ブログ:仙人の祈り
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