いよいよ米利上げ発表!? 材料出尽くし後の「押し目買い」は有効か

「万が一」にも注意

清水 洋介
2016年12月12日
日経平均株価は12日、終値で昨年大納会以来の1万9000円台を回復

 波乱の米大統領選挙から先週末でちょうど1カ月が経った。その間21日の営業日のうち、TOPIXではなんと18日が前日比でプラスとなり、前日比でマイナスとなったのはたったの3日という状況だ。それだけインパクトがあったということなのだろうが、目先的な過熱感などを考えると行き過ぎの面もあるのではないか。

 ただ、米大統領選挙の翌日の上昇を見て「戻し過ぎ」と指摘してから1カ月間、「もういいだろう」と言い続けてきたのだが、円安も止まらず、調整らしい調整もなく上げ続けている。過熱感も買い一巡感も出ないという状況だ。

 その要因としては、「トランプショック」があると盛んにあおられていたことで信用取引の売りが積み上がっていたことや、米国でも大統領選挙という重しが外れたことで利上げを織り込む動きになっていたことなどが挙げられるだろう。その間に米国で発表された経済指標も好調なものが多く、利上げを確実視させるものとなっている。

 利上げが確実視され、新興国の通貨が対米ドルでも下落する中で、世界的な景気鈍化懸念、欧州などの金融不安も見られないということで、昨年からの米国の利上げを嫌気して売られるという展開とは反対の動きとなっている。

利上げはどこまで織り込んだか?

 では、米国の利上げ、そして円安を日本の株式市場はどこまで織り込んでいるのだろうか。今回の利上げをほぼ織り込んでいるだけでなく、世界の情勢を見て「利上げができる」状況ということで、新興国などの経済情勢が悪化しないということまでも織り込んでいるはずだ。

 また、先行きの利上げペースも、比較的早いペースとなるものというところまで見ているのではないか。さらに、この異様に強い相場の中では、原油の減産合意などインフレ要因となるもの、そして米国内での好調な景気なども織り込まれているとも考えられる。

 そのため、実際に利上げが行われて、ここからのペースが示されたところでは、出尽くし感から売られるということも考えておいても良いだろう。米国の10年国債の利回りを見ると、大統領選挙前に1.8%程度であったものが、2.5%程度まで上昇している。その前の上昇を加味すると、1回の利上げで0.25%の利上げが行われるとして、単純に考えると3回の利上げを織り込んでいるような水準ということになる。

 そして、為替もすでに10%程度円安となっているということを考えれば、利上げでの金利差を織り込んでいるものと考えられる。そして、もし利上げがないということになると、織り込まれたものが失望から一気に逆回転を始めるという懸念もある。米FOMC(公開市場委員会)前に持ち高を調整しておこうという投資家も多くなるのではないか。

「万が一」を考えておこう

 以前から指摘している通り、こうした金融政策を決めるイベントの前には、その金融政策の結果が織り込まれているのかどうかをしっかりと考えておく必要がある。そして、万が一織り込まれていない方向に行くと大きな動きになってしまうということは、気を付けておかなければならない。

 特に今年は、そうしたイベントに振り回された感じが強い。4月の日銀の金融政策決定会合の前には「追加緩和がある」と報道されて買われたものの、実際には追加緩和がなく、大きく売られるということになった。6月の英国の国民投票では、EU(欧州連合)残留が確実視された中で、逆に離脱となったことで大きな下落となった。

 そして今回の米大統領選挙でも「トランプショック」が喧伝され、クリントン氏が優勢と伝えられた中でトランプ氏が当選となった。にもかかわらず、売られずに大きく上昇し、どんでん返しとなった。

 ここからの重要なスケジュールを考えると、米FOMCや大統領選挙の選挙人の投票などがある。クリスマス休暇を前に「万が一」を考えると、実際に利上げがあってもなくても、選挙人の投票が無事に終わったとしても、利益確定を急ぐ動きや損失確定を急ぐ動きが出る可能性がある。そして、材料出尽くしとなる可能性が高いのではないか。

 ここまで一気に上昇した後では、こうした手仕舞い売りなどが出て株価が安くなると、「安くなったから買おう」ということで安易に買ってしまうことがある。しかし、実は「押し目」ではなく、「下落の始まり」、「調整の始まり」ということも多いため、注意が必要である。

 「押し目待ちに押し目なし」という相場格言もあるが、今回は押し目がないくらい強い相場と考えるよりは、「押し目と思ったら下落の始まりだったから押し目はない」というように考えておいても良いと思う。

 日経平均の水準としては、さすがに一気に2万円を付けるというよりは、今週いったん1万9000円台前半で高値を付け、1万8000円台半ばくらいまでの調整はあると思う。そして月末にかけて堅調となり、年が明けてからは再度手仕舞い売りに押されるということになるのだと思う。

 買える銘柄も少なくなってきたが、引き続き出遅れ感が強い銘柄などに注目してもいいだろう。明治HLD(2269)などの食品株や、カゴメ(2811)藤田観光(9722)などの12月の株主優待の権利が期待される銘柄が、利益確定した後に買い直されるのではないか。

 清水洋介/大和証券、マネックス証券、リテラ・クレア証券など経て、現在アルゴナビスでフィナンシャルコンシェルジュ
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