マンハッタン五番街は大混雑、米国で実感した堅調な消費

トランプタワーは観光名所に

岡田 晃
2017年01月06日
トランプタワーはちょっとした観光新名所に(筆者撮影)

 2017年の大発会で日経平均株価は昨年末比479円高となり、幸先の良いスタートとなりました。これに先立つ3日の米国ニューヨーク株式相場も上昇しました。昨年11月の同国大統領選後のトランプ相場の勢いは年が明けても続いています。

 この株価上昇の背景にはトランプ次期大統領の経済政策への期待があるのは周知の通りですが、見逃せないのは米国の足元の景気自体が堅調なことです。昨年12月に同国を訪れ、それを実感してきました。

 ニューヨーク・マンハッタンの五番街やタイムズスクエアは買い物客や観光客でごった返し、行き交う人の群れで歩道は渋滞状態となっていました。トランプタワーが新たな観光名所になっていたのはご愛嬌としても、高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」や有名ブランド店をのぞくと、店内はどこも大変な混雑でした。

 ニューヨーク滞在中には気温がマイナス7度台、体感温度がマイナス12~13度という寒波がやってきて一晩で大雪になりましたが、そんな寒さをものともせず、多くの人が街に繰り出していました。ニューヨークの、特に繁華街は例年12月になると人出が多く華やかな雰囲気にあふれるのですが、今回は例年以上ににぎわっている印象でした。

トランプラリー前からマインド上向き

 このような街角の様子から同国の消費の好調ぶりを肌で感じたわけですが、それは消費関連データにも表れています。ニューヨーク滞在中に商務省が発表した昨年11月の小売売上高は前月比で0.1%増にとどまったものの、前年同月比では3.8%増と堅調でした。

 小売売上高は全米の小売業・飲食サービス業の約5000社を対象に調査しているもので、個人消費の動向を広範囲にカバーしているデータです。最近の推移を見ると、15年から16年にかけては一部の月を除いて前年同月比の伸びが1~2%台に鈍化していましたが、昨年9月は3.3%増、同10月4.2%増、同11月3.8%増と3カ月連続して伸びが拡大傾向を見せています。

 つまり、トランプ相場が始まる前から消費は上向きのサイクルに入っていたと見ていいでしょう。そこに11月以降はトランプ勝利を受けて株価が上昇し、消費者心理をさらに改善させている、というのが現状のようです。

 11月の小売売上高の数字は、同月下旬から始まったクリスマス商戦の状況をまだ一部しか反映していませんが、その後に発表された他の消費関連データを見ると、消費の上向きが一層はっきりしています。

 たとえば、12月のミシガン大学消費者態度指数は前月より6.4ポイントと大幅に上昇して98.0となり03年12月以来、12年11カ月ぶりの高水準に達しました。また、コンファレンスボードが発表した12月の消費者信頼感指数は前月比6.6ポイント上昇の113.7となり01年7月以来、15年4カ月ぶりの高水準を記録しました。

 この二つの指数はともに消費マインドの動きを敏感に示す指標で、景況感、雇用状況、所得、購入計画などについて消費者へのアンケート調査を集計し、その結果を指数化したものです。このうち、ミシガン大学の指数は発表時期が早いという利点がありますが、調査対象が500人と少ないことが難点です。一方、コンファレンスボードの消費者信頼感指数は調査対象が5000人と多く、より信頼性が高いとされています。

 このため、多くの市場関係者は、ミシガン大の指数でまず消費マインドの動向を速報的に素早くつかみ、コンファレンスボードの指数で確認するといった使い方をしているようです。この観点から見ると、両指数の12月の結果は消費マインドが急速に上向いていることがよくわかります。

 特に、コンファレンスボードの指数は米国株式との連動性も高いと言われています。実際、同指数とダウ平均の推移を一つのグラフにすると、ほぼ同じような動きをしています。株価の先行きを占ううえでも、コンファレンスボードの消費者信頼感指数には注目しておくといいでしょう。

保護主義的な姿勢は変わらず

 ここへきて消費が上向いているのは、新車販売台数の推移にも表れています。前号で取り上げたように、8~10月の3カ月間は前年同月比でマイナスとなっていましたが、11月に3.7%増と4カ月ぶりにプラスとなり、12月も3.1%増でした。この結果、16年の年間販売台数は1755万台となり、2年連続で過去最高を記録しました。

 消費関連ではありませんが、年明け早々に発表された12月のISM製造業景況感指数が前月比1.5ポイント上昇の54.7と2年ぶりの高水準となったのも、こうした堅調な消費が企業の景況感改善につながったと見ることができます。大統領選では労働者層の雇用不安や格差への不満が浮き彫りになりましたが、その一方で消費行動を活発化させている消費者の姿にややギャップを感じてしまいます。

 問題は、こうした好調な消費が長続きするかどうかです。それを左右するのは、やはりトランプ次期大統領の政策と発言次第でしょう。ベストシナリオは、①公共インフラ、減税、規制緩和などを公約通り実行して景気を押し上げ、②貿易・通商面では保護主義的な政策を和らげて現実路線に転換、ーーですが、逆に①国内経済政策は財源の制約や共和党の反対で規模を縮小、②保護主義的な政策を強硬に実行、ーーという最悪のシナリオもありうるわけです。

 ちょうど米自動車大手、フォードがメキシコの新工場建設を中止したとのニュースが飛び込んできました。このような個別企業の経営にまで介入するようなやり方を見ると、保護主義的な姿勢はそう簡単に変わらないように見えます。トランプ氏のツイッターでの発言や20日の大統領就任演説などから目が離せません。

五番街にある大手百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」前はラッシュアワー並み(筆者撮影)
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞社に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサーなども担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。ブログ「経済のここが面白い!」も執筆中。公式ウェブサイト「岡田晃の快刀乱麻」。
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