17年はあの高利回り魅力の投信が復活する!?

昨年は低迷が続いたが…

鈴木 雅光
2017年01月06日
J-REITには利回り7%台の銘柄も…

 2016年のJ-REIT市場は基本的に低迷続きだった。東証REIT指数の月末値を追うと、4月末がピークで1924.44ポイントだったが、10月末には1785.97ポイントまで下落。そこから若干戻したものの、12月末は1855.83ポイントで取引を終えた。

 16年初めにはJ-REITに対してある種の期待感があったように思う。

 日銀は同年1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定し、同年2月16日から実施することを発表した。こうした中、10年物国債利回りは急低下し、同月24日からマイナス圏に突入。一方、J-REITの分配金利回りは同月末、3.27%で推移していた。J-REITの予想配当利回りから10年国債の利回りを差し引いたスプレッドは、この時点で3.325%だった。

 グラフを見るとわかるように、東証REIT指数とスプレッドの動きは逆相関の関係にある。東証REIT指数が上昇すれば、スプレッドは狭まる傾向にある。これはJ-REITの価格が上昇することで、予想配当利回りが低下するからだ。特に近年は10年物国債利回りが底ばい状態にあったため、予想配当利回りの上下がスプレッドに反映されやすい環境が続いた。実際、15年8月末までの推移を見ると、見事に逆相関のグラフが描かれている。

 だが、15年11月末から16年4月末までは、東証REIT指数が上昇するなか、スプレッドも広がる傾向を見せた。東証REIT指数が上昇すれば予想配当利回りは低下する。にもかかわらずスプレッドが広がったのは、マイナス金利の導入で10年物国債利回りがマイナス圏で低下し続けたからだ。

 東証REIT指数は16年4月末に1924.44ポイントまで上昇。確かにここまではマイナス金利が深掘りされるなか、予想配当利回りの高いJ-REITが投資対象として選好された。1924.44ポイントは、リーマンショックで同指数が急落した08年10月18日以降の最高値である。

 その後、16年末にかけて失速したのは、日銀によるJ-REIT買い入れが進まないうえ、日銀が同年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定したためだ。それまでマイナス圏だった長期金利が、この金融政策によってゼロ%水準まで上昇することから、J-REITの予想配当利回りとのスプレッドが縮小するという見方が浮上。加えて、J-REITのIPO新規公開)やPO(公募・売り出し)が相次いだことで「市場の需給バランスが悪化する」との懸念も浮上し、J-REITの上値を抑える形になった。

海外投資家の動向を要注視

 では、J-REIT市場の買い主体として注目されるのは外国人投資家、投資信託、銀行がそれぞれ今後、どのような動きをすると考えられるのか。

 海外勢は米国のトランプ次期大統領の政策次第だ。保護主義的な政策を強めてドル安円高が進むようであれば為替差益狙いで保有し続ける可能性もあるが、もう一段のドル高円安が進むなら、11月末時点で1624億円の買い越しになっている分の売りが出てくる恐れがある。海外勢の売買動向は、J-REITの値動きに大きな影響を及ぼすだけに注視しておきたい。

 投信はJ-REITを組み入れた毎月分配型ファンドの人気化が、これまでの買い越しを支えており、直近では買い越しが続いてきたが、長期的に考えれば、この手のファンドは縮小するだろう。保有者は高齢者が多いと見られるが、こうした受益者は近い将来、生活費を補填するため、運用資金の取り崩しに動く。

 しかも、個人金融資産の多くは現在の60~70代に偏在している一方、30~40代の貯蓄額は小さい。この構造が続くと、時間の経過に伴い、個人金融資産は減少傾向をたどる。J-REITを組み入れた毎月分配型の投信は解約増に伴い、J-REIT市場において長期的に売り圧力になる恐れがある。

 銀行は16年11月末までの買い越し額が15年に比べて約6分の1まで縮小している。ただ、J-REITの予想配当利回りと10年国債利回りとのスプレッドは3%を優に超えており、銀行としては十分に買える水準だ。4月以降の新年度入りで、新たな買いがどの程度入るかに注目したい。

 こうして俯瞰(ふかん)すると、マーケットの動向次第で売り越し、買い越しのいずれにも転じる可能性がある海外投資家、将来的に売り圧力として懸念される投信、継続的な買い主体となる銀行、という感じだろう。

 個人から見ると、利回りベースで3%が確保できる投資対象は魅力的だ。最も予想配当利回りが低い銘柄でも2.6%は確保できる。高いものだと7%を超えている。投資対象として検討する価値はありそうだ。

すずき・まさみつ●岡三証券の支店営業、公社債新聞社の記者などを経て独立。JOynt代表を務める。金融ジャーナリストとして雑誌、書籍の執筆など多数。
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