目指すは「コインランドリー業界のセブンイレブン」?

九州発の直近IPO銘柄

佐久間 あすか
2017年03月10日
東京・阿佐谷にある「洗濯天国」の「シェアーズランドリー」(筆者撮影)

 「コインランドリー」といえば、以前は「暗くて入りにくい」というイメージ。洗濯機の前には雑誌を読みながら待ち時間を潰すジャージ姿の独身男性の姿。女性が足を踏み入れるにはちょっと……。ところが最近、あちこちでオシャレなコインランドリーを見掛けるようになりました。

 東京・阿佐谷にある業界の老舗「洗濯天国」の運営する「シェアーズランドリー」を訪れていた人に話を聞いてみました。「乾燥機が壊れちゃって。予算的に新しいのが買えないから、ここにきているのよ。1回300円だし、家も近いからほんと助かるわ」(70代女性)。子ども連れの30代の男性は「休みだったから娘と一緒に来た。たまった洗濯物を洗うためにね。キッズスペースがあって清潔感のある店内だし、安心感もありますね」……。

 コインランドリーが増えています。現在は全国に約1万8000店舗。最近は共働き世帯の増加に伴って「短時間で洗濯を済ませたい」というニーズが高まってきました。ダニや花粉などのアレルギーに悩む人も増えており、こうした追い風を受けて店舗数は年率5%程度の伸びを記録しているといわれています。

 中には、クリーニング店さながらの洗濯代行サービスを手掛けるランドリーもあれば、カフェスペースを備えた店も登場。実はある月刊情報誌の2017年のヒット商品予測でも、ラウンジスペースやゲーム施設などを併設した「都市型ソーシャルランドリー」が7位にランクされています。

 コインランドリーの市場拡大で潤っているのが業務用洗濯機のメーカーです。業務用では国内で7割以上のシェアを握るとされる中国の家電メーカー、ハイアール傘下のアクアの広報担当者は「この1~2年、受注が増えすぎて生産が間に合わない。現段階で依頼を受けても納入できるのは半年後」とうれしい悲鳴を上げています。

東京は陣取り合戦の様相だが…

 「コインランドリーの運営を通じて保有する土地を活用したい」というオーナー志望者も増加。コンビニとは違って人件費がほとんどかからないのが魅力といいます。不動産や建設業界からいわゆるフランチャイジーとして参入する動きも活発化しています。

 ただ、業界関係者からは「ブーム」ともいえる状況を危惧する声も聞かれます。洗濯天国の専務、田村和明さんは「副業など投資対象として見る向きもあるようだが、100円玉商売で安定収入がすぐに得られるほど簡単なビジネスではない」と指摘します。

 採算に合うにはいったい、どの程度の売り上げが必要になるのでしょうか。ある業界関係者が説明してくれました。以下はある店舗の例です。毎月かかる費用は洗濯機などのリース代が15万円。店舗の家賃も15万円。さらに管理費なども上乗せされると、損益分岐点の売上高は42万円前後になるそうです。

 客単価が700円とすれば、毎月600人の来店が必要。1日当たり20人が足を運んでくれないと損益分岐点売上高をクリアできない計算です。好立地は業界大手の直営店に押さえられており、郊外店だと駐車場を併設しないと集客は難しくなります。1~2月の雨の降らない時期には売り上げが落ちるなど天候次第で集客が左右されやすい傾向もあります。

 これに対して、店舗立ち上げの初期投資は約1000万円。その回収が簡単でないのは容易に想像できます。洗濯天国の田村さんは「都心部だと地価が高いうえ、競争激化で商圏の掘り起こしも難しくなっている」とも語ります。 

東京・新宿にあるWASHハウスの直営店(筆者撮影)

 「陣取り合戦」の様相を呈する東京。そうしたなか、あえて積極展開を見据える会社があります。昨年11月に東証マザーズへ上場した業界大手のWASHハウス(6537)です。同社は宮崎が本社で、店舗は九州中心に386と業界トップです(昨年12月末現在)。このうち、361がフランチャイズ(FC)店で、25が直営店舗です。

 足元の業績は好調に推移しています。前2016年12月期営業利益は前期比約34%増の2.9億円。今17年12月期も増収増益を見込んでいます。営業益予想は前期比約27%増の3.7億円です。

 東京には前12月期に直営で2店舗を新規出店。今12月期は新たに直営3店舗を開設する計画です。東京進出をめぐっては、「九州だと地価が安いうえ、桜島の噴火、中国のPM2.5や黄砂など地域の特殊な事情もある。首都圏ではそう簡単にいかない」などと冷ややかな見方もありますが、同社社長の児玉康孝さんは「今は(直営店を通じて)データを蓄積している段階」としながらも今後の展開には自信をのぞかせます。

 その裏付けになるのが、FC主体の独自のビジネスモデルによる差別化戦略です。児玉さんによると、最大の強みはビッグデータを使ったマーケティング。各地域の交通量、世帯数、年齢、収入状況などを細かく把握したうえで売り上げシミュレーションを行い、それを基に会社側が出店候補地を選定。オーナーに建物を借りてもらう方式を採用しています。児玉さんは「これまで採算が合わずに辞めたFC店はない」などと強調。東京でも将来はFC中心のシナリオを描いています。

 ハイアールや米マイクロソフトとタッグを組んだ新サービスも計画。「洗濯しない国はない」と話す児玉さんは米国や東南アジアへの進出も視野に入れています。

 国内のコンビニエンスストアは今や5万店超。「日本の新たなインフラ」とも称されるなど、身近で便利な存在になりました。WASHハウスは「コインランドリー業界のセブンイレブン」になることができるのでしょうか。

さくま・あすか●千葉県出身。四国放送、テレビ大阪を経て現在、日経CNBCキャスターを務める。人に媚びず、悪口を言わず、そして、気配り上手なのが最大の魅力。視聴者だけでなく取材先にも「あすかファン」が多い。自宅ドアの3メートル手前で酔いつぶれたまま撃沈するなど数々の酒豪伝説もあまたの人を引き付ける。ちなみに最近、はまっているのは「ワイナリーめぐり」
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