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人気株ばかり追うな、謙虚になれ

人気投資マンガ『インベスターZ』で学ぶ投資心得

2015年04月28日
(出典)2巻credit.16

ゴールドラッシュに銘柄選びの本質あり

 『インベスターZ』から得られる教訓も見てみよう。まずは「金を掘ったヤツに金持ちはいない」。これはゲーキチ株の次の投資先に悩む財前にキャプテンが言うせりふだ。

 19世紀の米国のゴールドラッシュを引き合いに出し、当時、儲かったのは金を掘りに行った人たちではなく、スコップやツルハシなど金を掘るための道具を売った商人や周辺の酒場の主人、さらには大量の人員や物資を運ぶために鉄道を敷いた実業家だと語った。

 それを聞いた財前は、よい株を探すのも同じ、との教訓を得る。ゴールドラッシュでは金採掘よりも、その周辺のニーズを取り込んだビジネスで成功を収めたのだと。ジーンズは作業用ズボンとして破れにくいとして、当時の金採掘者たちから普及し始めたというのも有名な話だ。

 このエピソードは、株式投資の本質を物語っている。単純にいえば株価が安いときに買って高く売れれば、大きな利益を得ることができる。そのためには、将来の値上がりが期待できる有望銘柄をほかの投資家が注目していない時期に仕込んでおくことが肝心だ。

 投資格言「人の行く裏に道あり、花の山」も同じことを意味している。人気銘柄ばかり追いかけるような、他人と同じ行動ばかりしていては、大きな儲けを手にすることはできないということだ。将来大きな利益が出そうなビジネスを手掛けているが、まだそれほど注目されていない銘柄を早い時期に仕込めれば、その後の株価上昇が期待できるわけだ。

時には忍耐力も必要

 漫画の中には「ボロ株を見よ」というせりふも出てくる。ボロとまではいわないまでも、人気銘柄だけでなく、企業の実力が株価に反映されていない割安な銘柄に目をつけることも株式投資で利益を上げるコツだ。これには、人気化するのをじっと待つ忍耐力も必要になる。

 むろん、期待したとおりに利益が出なかったり、買った後に一段と大きな下げに見舞われることもある。大きなリターンを狙えば、リスクと背中合わせになるのが常だ。そうした銘柄を選ぶ際は、事業内容や市場環境をしっかり調べるなどして、自分なりの判断基準を持つことが必要になる。

のめり込まない 調子に乗らない

 『インベスターZ』には、財前たち投資部のメンバー以外のキャラクターも登場する。その一人が、財前らが通う学園の創設者一族の娘で、中学生の藤田美雪だ。彼女は子どもの頃に投資を始めており、同級生二人に株式投資を指南する。

 投資を始める前に二人には「囚(とら)われない、侮らない、恨まない」という3つの誓いを立てさせる。まずは、中学生なので株式投資にのめり込まないこと。続いて、少し儲かったからといって調子に乗らず、つねに謙虚に慎重でいること。最後は、投資は自己責任であり人のせいにしたり、社会を恨まないことだと説明する。

 株式投資を始めると、つい保有株の値動きが気になり、一日に何度も株価をチェックして仕事が手につかなくなりがちだ。また、財前のようにビギナーズラックを体験すると、投資金額を引き上げてより大きなリターンを求めるようになり、思惑に反して保有株が値下がりするとそれまでの利益が吹き飛んでしまうこともよくある。

(出典)3巻credit.18
(出典)3巻credit.18

 痛い思いをして体で覚えることが投資上達の王道とはいえ、回復不可能な痛手を負っては元も子もない。「慎重、謙虚」は、個人投資家にとって肝に銘じるべき言葉だろう。

 最終的に投資は自己責任。他人の意見を参考にしたとしても、売買の決断は自分で下している。銘柄選びや売買タイミングを誤ったら、その失敗を反省し次に生かすことが重要。そうでなければ投資は長続きしないし、満足のいく利益を得ることもできないだろう。ただし、投資経験が浅いうちは、自分の判断が正しいのかどうか迷いが生じるものだ。この迷いを解決する方法も描かれている。

やると決めたことはやる

初来日時のウォーレン・バフェット氏(2011年撮影:尾形文繁)

 優良株への長期投資で際立った成功を収めた著名投資家、ウォーレン・バフェット氏の肩に美雪が乗っているシーンで、意味するのは、先人の知恵に学ぶことが成功の近道だということだ。美雪はバフェット氏を信奉し、「やると決めたことはやる」という氏の信念を、自分の投資原則にしている。株式市場が暴落しても保有株を手放さず、長期で資産を増やしたバフェット氏に倣い、「お薦め株や人気株には手を出さない。自分の目と耳で確かめた株しか手を出さない」と語っている。

 自己責任を裏返した言葉だが、個人投資家も目指すべきはこの境地だろう。自分が納得して選んだ銘柄だからこそ、狙いどおりに上昇したときは喜びも大きい。

 こうした投資の醍醐味を得られるようになるには、試行錯誤しながら経験を積む必要がある。ただし、投資家がぶつかる壁や悩みには共通点が多い。『インベスターZ』には登場人物が投資家として成長する姿を描きながら、その悩みの解決に役立つ教訓がちりばめられている。

■『インベスターZ』とは?

2013年6月に『週刊モーニング』(講談社)で連載を開始し、単行本は8巻まで刊行中。作者は『ドラゴン桜』を手掛けた三田紀房氏だ。ストーリーは、創立130年の中高一貫進学校・道塾学園にトップで合格した中学1年生の財前孝史が、各学年成績トップのみが参加する秘密の「投資部」に入部するところから始まる。部員の使命は3000億円を投資で運用し、年8%以上の利回りを生み出すこと。そのため創立以来、最高水準の教育設備を誇る道塾学園は学費が無料という設定だ。財前家と学園創設家との因縁や、日本経済の歴史を絡めながら、投資を通じて主人公が成長していく姿を描いている。連載では現在FXに挑戦中。登場人物の心情、せりふは投資のプロをもうならせている。
【インベスターZ(1)試し読みはこちら↓】※パソコンの場合はInternet Explorer11以上、Firefoxで閲覧してください。

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