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相場急落時にはどうする? 「投資指標」の実践活用法

吉野貴晶アナリストに聞く

島 大輔
2015年09月04日
PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)、配当利回りといった投資指標。投資をするうえでは、このような投資指標をきちんと理解することが大切だ。これらの見方や使い方はもちろん、短期、中期、長期のそれぞれの期間で有望銘柄を探す実践的な活用法をまとめた『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方』(日本経済新聞出版社刊)。足元の投資環境下で、投資指標をベースにどのように銘柄を選べばいいのか。著者である、大和証券の吉野貴晶チーフクオンツアナリストに聞いた。

ーー著書で投資指標の実践的な使い方を紹介しています。

 ビギナーの中には、銘柄をどう選んでいいのかわからないために、投資信託やETFを買っているという人もいる。また、「オリンピック関連など人気のテーマだから」という理由だけで銘柄を選んでいる投資家の方もいるだろう。しかし、「会社の価値に対して、今の株価が上がりすぎていないか」が判断できれば、よりよい銘柄選びができる。そのために必要なのが、投資指標を使いこなすことだ。

よしの・たかあき●大和証券チーフクオンツアナリスト。1965年埼玉県生まれ。山一証券などを経て、2002年に大和総研に入社。10年より現職。著書 に『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方』(日本経済新聞出版社)、『サザエさんと株価の関係』(新潮新書)など。

 たとえば、NISA(少額投資非課税制度)の導入もあって、株価に対する配当額の割合を示す配当利回りが重視されている。しかし、足元の配当利回りが高かったとしても、その企業が長期的に高配当を続けることができるのか、株価自体が下落してしまうリスクはないのかといったこともチェックしなくてはいけない。

 収益性を計る代表的な投資指標の一つにはROE(自己資本利益率)がある。最近では政策面や外国人投資家の動きからROE重視と言われ、この指標を意識している個人投資家が増えている。このように、一つの投資指標だけでなく、いくつもの投資指標を組み合わせて企業価値を評価することが大切だ。

 今までの投資本は、ROE、PBRなど投資指標を紹介していたとしても、指標の説明で終わってしまうことが多く、実践的な使い方が書かれていなかった。そこで、どのような場面でどのような指標を使って銘柄を選ぶかを解説し、実際の投資に役立つような本を目指した。

ーー実際に投資指標を活用して銘柄を選ぶためには、投資期間を設定することが大切だと指摘しています。

 期間を考えずに株を買うと、株価が下がった場合に「売らなければ損は確定しない」ということで、塩漬けにしてしまうことが多い。これはそのまま株価が下落するリスクから目を背けているだけで、いちばん投資で危険なやり方だ。投資期間を設定することで、その期間でどれくらいのリターンを稼ぎたいかを意識する一方で、損するリスクも認識できる。たとえば1年以内の短期で投資するならば、その間で株価が下落していたらきちんと損切りすることができる。実は、銘柄や投資額を決めることと同じくらい、投資期間を決めることは重要だ。

ーー1年未満の短期投資の場合、景気、投資家心理、季節性によって投資指標を使い分けることが大事だと指摘しています。

 短期投資の場合、中長期の投資に比べて足元の投資環境の重要性が高まる。その時々の状況に合わせて、投資指標を使い分けなくてはいけない。(下図参照)

 たとえば、足元の状況を考えると、政策面での下支えが期待される一方で、これまで悪かった内需については、リバウンドが続きそうだ。このように景気の踊り場から内需が回復していく途上のステージでは、経常増益率が大切になる。

 また、季節性としては、四半期に1回の企業の決算発表直後は、業績に対する割安さに注目だ。特にデフレからインフレに変わりつつある過程では、企業の純資産評価が上がるためPBR(株価純資産倍率)の重要性が増す。

ーー相場が急落した際には、行き過ぎた下げに対するリバウンドを狙う「リターンリバーサル戦略」もあるそうですね。

 リターンリバーサル戦略とは、急落した後にリスクオンになって株価が戻る過程で、下落幅が大きかった銘柄に投資するというやり方だ。ただ、これは突発的なニュースに反応してすぐに売買しなくてはいけないなど、一般の個人投資家にはハードルが高い面もある。

中長期ではバリュー投資が有効

ーー中長期的な戦略においては、目先の景気、投資家心理はそれほど意識しなくてもいいのでしょうか?

 過去の検証では、中長期ではPERやPBRといった割安さを計る指標を基にしたバリュー投資がいいという結果になっている。つまり、マーケットで割安に放置されている銘柄を買って、そのまま保有し続けるのがいいということだ。ただ、株価が下がって割安になったからといって飛びつくと、利益の予想値自体が下がって結局割安さがなくなってしまう「バリュートラップ」にはまることがある。PERに加えて、会社の事業環境や、ROEなど収益性がいいかどうかもチェックすることが必要だ。

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 また、投資期間が長い場合、定期的に保有銘柄をチェックしなくてはいけない。最低でも年に1回くらいは、銘柄を見直す作業を行ったほうがいい。企業に不祥事があった場合など、業績以前の問題があってはどうしようもないし、収益性が想定していたよりも大きく下がってしまってもいけない。

  それほど頻繁に入れ替えをする必要はないが、変化が大きい場合は、銘柄を入れ替えたほうがいいだろう。

ーー今の投資環境を前提にしたアドバイスを。

  一般論としては、デフレのときは現預金を持っていることがいい選択となるが、インフレが進む中ではおカネの価値は相対的には減っていく。そのため、現在のようにインフレに転換していこうとしている中では、株などで運用をすることが大切になる。今回の著書は、決して大儲けを狙うようなやり方を教えているわけではなく、安定してリターンを上げられる手法を紹介している。投資初心者の方も、今後の投資の参考にしてもらいたい。

(聞き手:四季報オンライン編集部 島大輔)

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